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東京地方裁判所 昭和51年(特わ)692号 判決 1976年7月19日

本店所在地

神奈川県川崎市幸区鹿島田四七番地

ふそう陸送株式会社

(右代表者代表取締役磯部芳雄)

本籍

東京都渋谷区東四丁目四番地

住居

同都同区東四丁目四番二五号

会社役員

磯部芳雄

大正一三年七月二五日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は検察官清水勇男、弁護人高橋栄出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告法人ふそう陸送株式会社を罰金一、〇〇〇万円に、被告人磯部芳雄を懲役八月に各処する。

被告人磯部芳雄に対しこの裁判の確定した日から二年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告法人ふそう陸送株式会社(以下単に被告会社という)は、神奈川県川崎市幸区鹿島田四七番地(昭和五〇年九月一日以前は、東京都港区浜松町一丁目二九番七号)に本店を置きシャシー運搬並びに梱包等を営業目的とする資本金一、八〇〇万円の株式会社であり、被告人磯部芳雄は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統轄しているものであるが、被告人磯部芳雄は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、輸送収入の一部を除外し、更に架空事故費を計上するなどの方法により所得を秘匿したうえ、

第一  昭和四七年四月一日から同四八年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億三、五五六万六、四四九円あったのにかかわらず、同四八年五月三〇日、東京都港区芝五丁目八番一号所在の所轄芝税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八、二四九万〇、四七一円でこれに対する法人税額が二、九四六万〇、八〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右被告会社の右事業年度の正規の法人税額四、八九六万四、八〇〇円と右申告税額との差額一、九五〇万四、〇〇〇円を免れ(修正損益計算書および税額計算書は別紙(一)(三)のとおり)

第二  昭和四八年四月一日から同四九年三月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億四、九一〇万七、〇二五円あったのにかかわらず、同四九年五月三一日、前記芝税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が八、五〇四万九、七七九円でこれに対する法人税額が三、〇三一万九、五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、もって不正の行為により右被告会社の右事業年度の正規の法人税額五、三八五万九、三〇〇円と右申告税額との差額二、三五三万九、八〇〇円を免れ(修正損益計算書および税額計算書は別紙(二)(三)のとおり)

たものである。

(証拠の標目)

判示全般の事実につき

一、登記官作成の昭和五〇年九月一九日付、昭和五一年一月二一日付各登記簿謄本(二通)

一、被告人磯部芳雄の検察官に対する供述調書

一、被告人の収税官吏に対する昭和五〇年四月二二日付、昭和五一年一月一四日付、同年二月九日付各質問てん末書

一、木村正孝の収税官吏に対する昭和五〇年七月一一日付質問てん末書

一、押収してある確定申告書二袋、元帳二冊(当庁昭和五一年押第九五七号の一ないし四)

(各勘定科目につき)

一、被告人磯部芳雄作成の昭和五一年一月二八日付上申書(別紙(一)(二)の各番号<1>陸送収入につき)

一、大蔵事務官作成の輸送収入除外額調査書(別紙(一)(二)各番号<2>輸送収入につき)

一、大蔵事務官作成の水増し陸送費調査書および架空計上陸送費調査書(別紙(一)(二)の各番号<4>陸送費につき)

一、大蔵事務官作成の架空計上燃料費調査書(別紙(一)の番号<6>燃料費につき)

一、大蔵事務官作成の「事故費に関する調査書」および高橋敏夫の収税官吏に対する昭和五〇年一一月一七日付、一二月二日付各質問てん末書(別紙(一)(二)の各番号<8>事故勘定につき)

一、大蔵事務官作成の車両売却に関する調査書、答申書と題する書面および木村正孝の収税官吏に対する昭和五〇年四月二五日付質問てん末書(別紙(一)(二)の各番号<11>減価償却費、同各番号<44>車両売却益、別紙(一)の番号<48>利子割引料、別紙(二)の番号<44>支払利息につき)

一、大蔵事務官作成の認定利息および役員報酬調査書(別紙(一)(二)の各番号<12>役員報酬、別紙(一)の番号<66>認定利息、別紙(二)の番号<62>認定利息につき)

一、大蔵事務官作成の繰上支給(仮装経理)賞与調査書(別紙(一)(二)の各番号<14>賞与につき)

一、大蔵事務官作成のスクラップ引取代金調査書および被告人磯部芳雄の検察官に対する供述調書(別紙(一)の番号<41>雑収入、別紙(二)の番号<40>雑収入につき)

一、大蔵事務官作成の受取利息調査書(別紙(一)の番号<42>受取利息、別紙(二)の番号<41>受取利息につき)

一、大蔵事務官作成の「貸倒引当金繰入超過額に関する調査書」(別紙(一)の番号<61>貸倒引当金繰入超過認容、別紙(二)の番号<55>貸倒引当金繰入超過につき)

一、大蔵事務官作成の未納事業税調査書(別紙(一)の番号<65>事業税につき)

一、大蔵事務官作成の架空計上輸送費調査書(別紙(二)の番号<5>輸送費につき)

一、大蔵事務官作成の架空計上旅費交通費調査書(別紙(二)の番号<24>旅費交通費につき)

一、小林政輝作成の「ふそう陸送(株)との企業年金保険契約について」と題する書面(別紙(二)の番号<42>保険収入につき)

一、検察事務官作成の報告書(別紙(二)の番号<61>事業税につき)

(法令の適用)

一、該当罰条と刑種の選択

被告会社の判示第一、第二の各所為……各法人税法一六四条一項、一五九条

被告人の判示第一、第二の所為…………各法人税法一五九条(いずれも懲役刑選択)

一、併合罪加重………刑法四五条前段

被告会社…………刑法四八条二項

被告人……………刑法四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に加重)

一、執行猶予…………被告人につき刑法二五条一項

(量刑の事情)

被告人は昭和三〇年ごろ被告会社を設立し、主として三菱重工の自動車部門(現在の三菱自工)の製品の陸送やその他の貨物の輸送等の業務を行なっているものであるが、被告会社の業績が順調に伸びるに従い、大きな利益を計上することによって三菱自工から陸送単価を引き下げられるおそれがあること、景気変動に備えることなどを主たる動機として脱税を企図し、輸送収入の除外、架空事故費、架空あるいは水増下請陸送費の計上等の方法により本件ほ脱を行なったものである。そのほ脱額は両年度で合計四、三〇〇万円余におよびその手段も相当巧妙でありなお簿外となった収入を自己の個人資産と混こうして運用するなどその情は悪質であると言わなければならない。もっとも被告人は本件を機会に反省し従来のワンマン経営体制の改善を計っていること、ほ脱額についても修正申告により加算税とともに完納したこと、個人資産と混こうした分として八、〇〇〇万円余に利息を付して会社に返還していることなど被告人に有利な諸般の事情をも考慮して主文のとおり量刑した次第である。

よって主文のとおり判決する。

(裁判官 安原浩)

別紙(一)の(1)

修正損益計算書

ふそう陸送株式会社

自 昭和47年4月1日

至 昭和48年3月31日

<省略>

別紙(一)の(2)

<省略>

別紙(一)の(3)

<省略>

別紙(二)の(1)

修正損益計算書

ふそう陸送株式会社

自 昭和48年4月1日

至 昭和49年3月31日

<省略>

別紙(二)の(2)

<省略>

別紙(二)の(3)

<省略>

別紙(三)の(1)

法人税額計算書

<省略>

<省略>

別紙(三)の(2)

法人税額計算書

<省略>

<省略>

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